遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第5章 凍れる月~生涯の想い人~
尹家では、梨花のような若い女中たちは数人、纏めて同じ部屋で寝起きしている。女中頭ともなるとひと部屋を与えられているが、グミョンは執事の妻であり、執事夫妻は屋敷の近くに小さな一軒家を構えて通ってきているため、実質にはグミョンは殆どその部屋を使わない。
数人で使うので、流石にある程度の広さはあるものの、各自の荷物といえるようなものはないに等しい。それぞれが専用の行李を持っていて、それを箪笥の代わりに使っている。
その朝、部屋に戻ってみたら、梨花の行李の上に一枚の紙片が置かれていた。
―こんや、つきがちゅ(う)てんにかかるころ、おくにわのものおきこ(ご)やにきてくた(だ)さい。たいせす(つ)なはなしがあります。だれにもはなし(せ)ないので、みつからないよ(う)に。 チョンハ
[今夜、月が中天にかかる頃、奥庭の物置小屋に来て下さい。大切な話があります、誰にも話せないので、見つからないように チョンハ]
数人で使うので、流石にある程度の広さはあるものの、各自の荷物といえるようなものはないに等しい。それぞれが専用の行李を持っていて、それを箪笥の代わりに使っている。
その朝、部屋に戻ってみたら、梨花の行李の上に一枚の紙片が置かれていた。
―こんや、つきがちゅ(う)てんにかかるころ、おくにわのものおきこ(ご)やにきてくた(だ)さい。たいせす(つ)なはなしがあります。だれにもはなし(せ)ないので、みつからないよ(う)に。 チョンハ
[今夜、月が中天にかかる頃、奥庭の物置小屋に来て下さい。大切な話があります、誰にも話せないので、見つからないように チョンハ]