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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第7章 哀しい現実

   哀しい真実

 梨花がお屋敷に戻ってから、日はもどかしいほどゆっくりと過ぎていった。
 何故、あの時、素直になって謝らなかったのか。いや、幾ら考え直してみても、あのときの自分の取った行動が間違っていたとは思えない。
 今も変わらず、ソルグクは尹南斗を梨花の恋人として認める気はなかった。南斗は梨花を必ず不幸にする。世間の人が聞けば、過保護気味の兄が抱く被害妄想にすぎないだろうが、ソルグクには確信に近い予感があった。
 ―だとしても、せめて謝らずとも、梨花が尹家の屋敷に戻る前に声をかけるくらいはできたはずである。
 それに、ああいう場合、周囲が消そうとすればするほど、恋の焔は燃え盛るものだ。何しろ慕い合う恋人たちは真剣そのものなのだから、止めれば、ムキになるのは判り切っている。

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