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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第7章 哀しい現実

 まさに、ソルグクにとっては晴天の霹靂といえる真相であった。
 自らの死期を悟り、病に蝕まれた身体に鞭打って真実を告げに来たジュソンの心根を思えば、梨花に言葉を伝えるべきだと思うが、到底、告げられるものではなかった。
 今になって、自分が尹南斗に感じていた得体の知れない翳は、こういうことだったのかと、ソルグクは思い知らされた。南斗が不幸の星を背負っていると言いながらも、南斗を慕う妹のためには己れの思い過ごしであって欲しいと願っていたのに。
 さんざん思い悩んだ末、再び尹家の屋敷に向けて家を出たのは、ジュソンが訪ねてきてから、五日後だった。
 尹家の執事に若さまに逢いたいのだと告げると、執事は不審そうな顔になった。尹家に奉公する妹ならともかく、一介の女中の兄が何ゆえ跡取り息子との対面を希望するのか解せなかったからだ。

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