テキストサイズ

遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第7章 哀しい現実

 沈着な表の顔の下に、束の間、傷つき易い脆い若者の素顔がかいま見えた。
「あなたが私を海棠から遠ざけようとするその理由を教えてくれないか。さもなければ、私は、どうにも納得できない」
「―どうしても真実が知りたいのか?」
 ソルグクは低い声で問うた。
「知れば、後悔することになったしても、それでも知りたいと願うのか?」
「後悔はしない。私は海棠を妻にすると決めているのだ。私には最早、海棠しかいない。彼女を妻にするためなら、何にだって耐える」
 きっぱりと言い切った南斗に、ソルグクは頷いた。
「あんたが何も言わず、このまま大人しく身を退いてくれれば、余計なことは言うまいと思っていたんだが―、どうやら、いちばん言いたくなかったことを言わなければならないようだ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ