テキストサイズ

遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第1章 燐火~宿命の夜~

 梨花はひたすら歩いた。歩けば、いずれは悪い夢から抜け出せるとでもいうように、闇雲に歩いた。
 かすかに川の流れが聞こえる。脚が石のようなものを踏みしめている。自分は今、橋を渡っているのだろうか。あの世とこの世を繋ぐ橋、この橋を渡り着れば、自分は一体、彼岸と此岸、どちらに辿り着くのだろう。
 兄上さま―。
 夢中で歩き続けていた梨花の意識は突然、ぷっつりと切れた。
 小さな身体はまるで花が萎れるようにゆっくりとくずおれ、地面に倒れ伏した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ