遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第3章 運命の邂逅
そのときも、生きているのかすら定かではない兄のことを考えていた最中だった。夕刻、梨花は少し早めに店を畳み、その日一日分の売り上げの入った巾着を懐にしまった。帰りに父の薬と鶏肉を買って帰るつもりだった。
ところが、である。
兄ソンジュンのことをつい考えてしまっていた梨花は、人通りの多い往来で向こうから来た男とぶつかってしまった。色白の細面で、梨花の好みではないけれど、世間の一般常識から見れば男前の部類に入る類だろうと思えた。
が、まだ二十歳前半にしか見えない若さなのに、どうも崩れたというか退廃的な雰囲気なのが気になった。着ているパジチョリは木綿の粗末なものだから、梨花同様、その日暮らしの若者に相違ない。
まあ、それはともかく、ボウとして町中を歩いていた非は我が身にもある。梨花は素直に謝ったのだが、男はろくに眼線を合わせようともせず、曖昧に頭を下げると、そそくさと足早に通り過ぎていった。
ところが、である。
兄ソンジュンのことをつい考えてしまっていた梨花は、人通りの多い往来で向こうから来た男とぶつかってしまった。色白の細面で、梨花の好みではないけれど、世間の一般常識から見れば男前の部類に入る類だろうと思えた。
が、まだ二十歳前半にしか見えない若さなのに、どうも崩れたというか退廃的な雰囲気なのが気になった。着ているパジチョリは木綿の粗末なものだから、梨花同様、その日暮らしの若者に相違ない。
まあ、それはともかく、ボウとして町中を歩いていた非は我が身にもある。梨花は素直に謝ったのだが、男はろくに眼線を合わせようともせず、曖昧に頭を下げると、そそくさと足早に通り過ぎていった。