遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第3章 運命の邂逅
「生憎と私は腕力には自信があるが、走り競争をして、お前に勝つ自信はあまりない。みすみすお前を逃がすような愚かなヘマをしたくはないでな。さあ、出すものをさっさと出せ。片方の手は自由に動くのだから、出せぬことはないはずだぞ」
男に促されても、掏摸はいっかな財布を出す様子はない。
と、掏摸が顔を歪めた。
「うっ、くぅ」
「どうしても大人しく返さぬというのなら、私にも考えがある。お前のこの腕を今ここで、へし折って―いや、二度と使いものにならなくしてやっても良い」
先刻までと異なり、その声には梨花ですらたじろぐような凄みがあった。
「うへぇ、い、痛ぇ」
どうやら男は先刻よりも更に力を込めたようである。掏摸は生っ白い顔を真っ赤にして、うんうんと唸っている。
男に促されても、掏摸はいっかな財布を出す様子はない。
と、掏摸が顔を歪めた。
「うっ、くぅ」
「どうしても大人しく返さぬというのなら、私にも考えがある。お前のこの腕を今ここで、へし折って―いや、二度と使いものにならなくしてやっても良い」
先刻までと異なり、その声には梨花ですらたじろぐような凄みがあった。
「うへぇ、い、痛ぇ」
どうやら男は先刻よりも更に力を込めたようである。掏摸は生っ白い顔を真っ赤にして、うんうんと唸っている。