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美人妻は性欲旺盛っ!

第23章 ひとりの戦い







「よかった…っ」



 ゆきは右京を抱きしめた

 大丈夫か、と聞かれる
 右京は怖くて震えた
 今頃になって震えが止まらなかった



「っ…無事でよかった…
間に合ってよかった…っ!」
「ゆきくん、ゆきくん…!」



 右京は涙声だった



「怖かった…怖かったよぉ…!」



 現実味のある死の危険
 刺されるかもしれなかったのだ
 右京が味わったそれと同じくらいゆきは怖かった
 右京をなくしてしまうかもしれない恐怖がゆきを泣かせた



「ゆき、くん…?」



 右京は見た
 ゆきが瞬きもせずキレイにぽろぽろと泣いている所を

 子供のようだった
 拭く事もしない衝動的な涙



「………よか…った…」



 右京こそ泣けた

 この人は、こんなにも、自分を想ってくれている
 抱きしめた
 抱きしめてあげた
 守ってくれた
 泣きついた
 安心したかった
 安心…させたかった



 ゆきの手が右京の頭を撫でる
 怖かった思い
 それが薄れていく

 このまま眠りたい
 右京は幸せなまま眠りたかった



 この人がいない生活なんて一秒たりとも耐えられなかった

 たぶん世界中を探しても
 この人以上に自分を愛してくれる人なんていない



(あぁ…もう…
バカだなゆきくんは…
私はケガひとつないのに…)



 好きだと思った
 愛しいと思った
 離れたくなかった

 伝わりすぎる想いが、右京の中の恐怖なんて溶かしてしまった

 ゆきのとてつもない好き

 でも右京の好きは
 それ以上に大きかった
 ゆきにはそれがわかってない






 右京は怖くて怖くて泣いている子供にキスをした






 大丈夫
 大丈夫だよ
 私は…あなたを――

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