
あいどる君に恋煩い
第6章 気持ち
「……ごめん。」
耳元で祐斗の優しい声がする。
「泣かせるつもりはなかったんだけど… ついカッとなっちゃって……」
抱きしめたまま私の頭を優しく撫でる。
そのまま、いつもの優しい口調、だけど少し申し訳なさそうな感じでポツリポツリと祐斗話しはじめた。
「…僕、初めての公演の日、ちょー緊張してて。
もう本番前なんて足震えてて本当に本番迎えたくないって思ってた。
でも本番はもちろん始まっちゃって。
でもそんな時、1番初めに目が合ったのは…都ちゃんだった。
都ちゃんと目が会った瞬間、なぜかすごい安心して。
それでなんとかステージを終えることができたんだ。
それから都ちゃんが毎回公演に来てくれるようになってから自分のファンだって知って。
…もちろん、僕には他にも大切なファンはたくさんいるよ?
………でも、都ちゃんが僕のファンだって分かった時、本気で嬉しくて。
手紙もみんな毎回くれるけど、
他のファンは『祐斗カッコいい!大好き!』ってたくさん書いてくれてて。
もちろん嬉しいけど…
学校のこととかたくさん書いてくれる都ちゃんの手紙はまるで自分がクラスメイトとか友達みたいな気分になれて、仕事があってなかなか学校に行けない自分にはすごく楽しくて毎回楽しみにしてて。
だから本当に大切な大切なファンだなって思ってた。
…思い込んでた。
でも今日、都ちゃんの様子が変だなって気になって。
なんだか敬太兄さんのことばっかり見てるし。
だからステージ裏に下がった時に敬太兄さんに聞いたらこないだカフェで会ったことを教えてもらって。
その時に敬太兄さんが
『俺たち、たぶん友達か恋人同士に見えたかも。(笑) 同い年だし楽しかった!』
って言ったのを聞いて。
その時に何故かすっごく腹が立った。
たぶん自分のファンなのに敬太兄さんに取られると思ったから。
だから握手での都ちゃんと敬太兄さんのやり取りが何故だか本当にイライラした。
それでそのイライラに任せて都ちゃんにこうやって八つ当たりしちゃったんだ…」
