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あなたが消えない

第18章 貫く、この気持ち

翔が姿を消して、3ヶ月、半年経った。

突然、私の目の前に今でも現れてくれるのを待っている。

諦めるな、忘れるな、貫いて、と励ましてくれる人が居るからこそ、私はいつまでも翔がフラリと現れてくれるのを、このアパートで待つ。

この角を曲がったら、あのアパートの前の電信柱の下に会社の車を停めて、タバコを吹かしながら私を待っている。

そんな光景を、毎日考えながら仕事帰りの道で妄想する。

時々、喫茶店で仕事先の仲良くなったオバチャンと独身の女の子と喋りまくる。

先にオバチャンが帰って行くと、独身の女の子と恋愛小説の話をする。

私は、彼女の小説の愛読者第1人者だ。

「裸足で階段を駆け降りて会いに行ったのよ。実はこれ、真夜中の話だからね」

「嘘っ、カッコいいわ~、それ」

と、彼女はスマホでメモを取る。

「こうやって話をしてる間も、翔さんは遠山さんの事を想ってるかと思うと、やっぱり運命の相手と出逢ったんだよね、凄いなぁ~」

「想ってるだけじゃねぇ。逢いに来てくれなきゃ。そう考えるといつまでもキリがなくて、結果寂しくなるんだよ?」

「寂しい時は、それでも好きと思えばいいよ。ひたすら好きと思えばいいって。それか、私を呼びつけてよ」

「ありがとう」

一人で家に居て、急に寂しくなって、切なくなって、胸が苦しくなると、床に耳を付けて下の階の物音を聞くの。

何も音はしない。

誰も居ないから、当たり前なんだけど。

何か聞こえたらいいのにって。

例えば、翔の足音や翔の声。

例えば、翔の咳払いやシャワーの音。

ベランダから下を覗いたり、真夜中にこっそり玄関を開けて、裸足でボンヤリと駐車場を眺めたり…。

おかしな事ばっかり、私はしている。

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