テキストサイズ

紅蓮の月~ゆめや~

第7章 第二話 【紅蓮の花】 エピローグ

―日々の暮らしに倦んだら、また、おいでなさいませ。
 「ゆめや」の女主人の妖しくも心地良い声が耳奧にこだまする。
 傘を開いてゆっくりと歩き始めた花凛が振り返った時、つい先刻出てきたばかりの店は既に降りしきる雪の幕に閉ざされて見えなくなっていた。まだほんの数メートル歩いたにすぎないのに、店はまるで最初から存在していなかったかのように雪の向こうに隠されていた。
 花凛は、まるで「ゆめや」の建物そのものがあの美貌の女主人と共に一瞬にして忽然とかき消えたような錯覚を憶えてならなかった。

【第二話 紅蓮の花 おわり】

ストーリーメニュー

TOPTOPへ