紅蓮の月~ゆめや~
第13章 最終話 【薄花桜】 一
治助が死んだらと想像するだけで、怖くて大声で叫びたくなってしまうほどの恐怖と淋しさに襲われる。そんな時、天主堂に行ってでうす様のお顔を見れば、不思議と少しでも心が落ち着くのだ。
―主はすべてを赦すようにとおっしゃいました。たとえ、自分にあだなす者であってさえも、ただ赦せと。
蒼い眼と輝く黄金(きん)色の髪を持った初老の南蛮人の宣教師はミサの後で人々にそう語りかけた。故国を遠く離れたはるかな日本で布教活動を続ける伴天連―でうす様の教えを広めるためにただ黙々と働く異国人の横顔は心なしか、でうす様に似ていた。それは、哀しみとか歓び、憎しみといったあらゆる感情から解き放たれ、魂の自由を得た人だけが持つもの、無私の顔だ。
―主はすべてを赦すようにとおっしゃいました。たとえ、自分にあだなす者であってさえも、ただ赦せと。
蒼い眼と輝く黄金(きん)色の髪を持った初老の南蛮人の宣教師はミサの後で人々にそう語りかけた。故国を遠く離れたはるかな日本で布教活動を続ける伴天連―でうす様の教えを広めるためにただ黙々と働く異国人の横顔は心なしか、でうす様に似ていた。それは、哀しみとか歓び、憎しみといったあらゆる感情から解き放たれ、魂の自由を得た人だけが持つもの、無私の顔だ。