紅蓮の月~ゆめや~
第14章 最終話 【薄花桜】 二
何人かの顧客もできた。女一人が慎ましく暮らしてゆくには十分すぎるほどの実入りがある。小文はここで治助を偲びながら、「ゆめや」を守り続けてゆくつもりだ。
この場所でずっと治助を待ち続ける。いつの世でかまた治助とめぐり逢うために、日々の暮らしの中で疲れた心を抱いて、この「ゆめや」の戸を叩いた人たちのために―。
この店は夢を売る店だから。「ゆめや」を訪れた人々に「ゆめや」の着物を着て貰って、ひとときの幸せな夢を見て貰うためにあるのだから。
小文はこの小さな町の片隅で「ゆめや」を守り続ける。
どこから運ばれてきたのか、蒼い空を眺める小文の上にはらはらと桜の花びらが舞い降りてくる。小文は薄紅色の愛らしい花びらをそっと掌(たなごころ)で受け止めた。
この場所でずっと治助を待ち続ける。いつの世でかまた治助とめぐり逢うために、日々の暮らしの中で疲れた心を抱いて、この「ゆめや」の戸を叩いた人たちのために―。
この店は夢を売る店だから。「ゆめや」を訪れた人々に「ゆめや」の着物を着て貰って、ひとときの幸せな夢を見て貰うためにあるのだから。
小文はこの小さな町の片隅で「ゆめや」を守り続ける。
どこから運ばれてきたのか、蒼い空を眺める小文の上にはらはらと桜の花びらが舞い降りてくる。小文は薄紅色の愛らしい花びらをそっと掌(たなごころ)で受け止めた。