紅蓮の月~ゆめや~
第15章 最終話 【薄花桜】 エピローグ
「お前さん―」
はるか昔に先立った良人を、彼女は呼んだ。雪の中に浮かび上がる良人は何も言わず、静かに微笑した。
―逢いたかった。
彼女もまた口には出さずに、長い年月抱(いだ)き続けた切なる願いを心で囁く。
―漸く迎えにきてくれたのね。
彼女は良人に微笑み返しながら言った。
良人が両手をゆっくりと差し出す。彼女の美しい双眸からとめどなく涙が溢れた。
最愛の男をひたすら待ち続けた、途方もない年月。もう、待ちくたびれてしまったと思ったことも何度かあった。
はるか昔に先立った良人を、彼女は呼んだ。雪の中に浮かび上がる良人は何も言わず、静かに微笑した。
―逢いたかった。
彼女もまた口には出さずに、長い年月抱(いだ)き続けた切なる願いを心で囁く。
―漸く迎えにきてくれたのね。
彼女は良人に微笑み返しながら言った。
良人が両手をゆっくりと差し出す。彼女の美しい双眸からとめどなく涙が溢れた。
最愛の男をひたすら待ち続けた、途方もない年月。もう、待ちくたびれてしまったと思ったことも何度かあった。