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紅蓮の月~ゆめや~

第16章 -すべての終わりに-

 あの店には謎めいた美しい女主人がいて、実幸に五百年近くも前の織田信長の時代のものだという小袖を着せかけてくれた。あの店で見た「夢」の中で、実幸は信長の妻であった濃姫に同化して、その記憶を共有した。現実として「ゆめや」にいたのはほんの一時間ほどの間のことだったのに、随分と長い刻が経ったように思えた。
 今日、高校の同窓会があり、久しぶりに元彼の強士(つよし)に再会した。三年前に手痛くフラレた男の子で、実幸が「ゆめや」に来るきっかけを作ったボーイフレンドだ。強士にも実幸にも既に新しい恋人がいて、実幸も三年前の失恋が笑い話にできるほど昔のことになっていた。三年ぶりに強士に逢ったのがきっかけで「ゆめや」を思い出し、こうしてふらりと訪ねてみる気になった。

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