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紅蓮の月~ゆめや~

第1章 プロローグ

 実幸は小首を傾げた。何とも変わった名前だ。一体、何を売る店なのだろうと興味が湧いてきて、実幸はガラス戸に手を掛けていた。
「いらっしゃいませ」
 ガラス戸を開け恐る恐る中を覗き込むと、いきなり声をかけられた。実幸は思わず飛び上がりそうになった。
「よくお見えになられました」
 その声にいざなわれるようにして視線を動かすと、美しい女性が微笑を浮かべていた。紫地の着物に錆朱色の帯がよく似合っている。年の頃は定かではなかった。若く見えるけれど、実際はそれほど若くはないようにも見える。
「あの」
 思わず口ごもると、美しい女性が艶(あで)やかに微笑んだ。
「どうぞ、お入りなさい」
 口調は優しげだが、何か逆らい難いものがある。

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