テキストサイズ

紅蓮の月~ゆめや~

第5章 第二話【紅蓮の花】 プロローグ

 それは本当のことだ。と、美しい女性は淡く微笑した。
「ここは、名前のとおり、夢を売る店ですよ」
「夢を売る―?」
 花凛は小首を傾げた。一瞬、眼の前の女性の頭がおかしいのではないかと疑った。が、女性は婉然と微笑む。
「うちは、あらゆる時代の衣装が取りそろえてあるのが自慢です。例えば、あなたはどの着物がお好き?」
 女性に問われるままに、花凛は片隅の衣桁に掛けられている着物を指した。朱塗りの衣桁には眼にも艶(あで)やかな打ち掛けがひろがっている。赤地に白い小花を散らした打ち掛けは、ひとめで花凛を魅了したのだ。花凛の言葉に、美しい女主人は微笑みながら頷いた。
「そうですか。流石にお眼が高いこと。あの打ち掛けは、大変由緒ある品なのですよ。良かったら、当ててご覧なさい」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ