紅蓮の月~ゆめや~
第1章 プロローグ
「ここは着物屋さんですか」
実幸が訊ねると、美しい女性はうっすらと笑んだまま頷く。
「古着屋です。でも、うちの店は着物を売るのではありません。夢を売るのです」
「夢を売る?」
実幸は茫然として問い返した。夢を売るとは一体どういうことなのだろう。女性は小首を傾げるような仕草をした。そんな風にすると、臈長けた美しさはなりを潜め、少女のようにあどけない表情になる。
「そう、夢を売るから、『ゆめや』なのです」
黙り込んだ実幸に、女性は念を押すように言った。
「このお着物がお気に召しましたか」
実幸は思わず頷いていた。ひとめ見たその瞬間から、確かにこの小袖に魅(ひ)かれていた。まるで最初からこの小袖が実幸の現れるのを待っていたかのように、ごく当然のこととしてこれを選んでいた。他の着物は端(はな)から眼に入らなかった。
実幸が訊ねると、美しい女性はうっすらと笑んだまま頷く。
「古着屋です。でも、うちの店は着物を売るのではありません。夢を売るのです」
「夢を売る?」
実幸は茫然として問い返した。夢を売るとは一体どういうことなのだろう。女性は小首を傾げるような仕草をした。そんな風にすると、臈長けた美しさはなりを潜め、少女のようにあどけない表情になる。
「そう、夢を売るから、『ゆめや』なのです」
黙り込んだ実幸に、女性は念を押すように言った。
「このお着物がお気に召しましたか」
実幸は思わず頷いていた。ひとめ見たその瞬間から、確かにこの小袖に魅(ひ)かれていた。まるで最初からこの小袖が実幸の現れるのを待っていたかのように、ごく当然のこととしてこれを選んでいた。他の着物は端(はな)から眼に入らなかった。