紅蓮の月~ゆめや~
第5章 第二話【紅蓮の花】 プロローグ
法皇から義経追討の院宣が出ている以上、義経はつまりは「天下の大罪人」であった。最早、どこにも逃げ場所はない。そんな義経が頼れる唯一の場所といえば、藤原秀衡の許しかなかった。
義経はかつてない苦境に陥れられていた。その義経を庇護した秀衡は平泉に「夢の都」と謳われるほどの絢爛豪華な文化を築いた不世出の英雄だ。あの平清盛でさえ怖れたほどの実力者であり、黄金に輝く中尊寺を建立した財力、即座に大軍を動かし得るほどの武力は地方武士と侮れないものがあった。しかし、義経がここに匿われてほどなく、その頼みの綱である秀衡が病篤くして、亡くなった。
かつて義経が元服して九郎義経と名乗り始めたばかりの少年時代、秀衡は年若い義経を保護した。鞍馬から逃げてきた義経は秀衡の庇護の下で少年時代を過ごし、兄頼朝の平氏打倒の挙兵に呼応し、顔も知らぬ兄の助けに何とかなりたいと秀衡に願い出て平泉を出ていった。
義経はかつてない苦境に陥れられていた。その義経を庇護した秀衡は平泉に「夢の都」と謳われるほどの絢爛豪華な文化を築いた不世出の英雄だ。あの平清盛でさえ怖れたほどの実力者であり、黄金に輝く中尊寺を建立した財力、即座に大軍を動かし得るほどの武力は地方武士と侮れないものがあった。しかし、義経がここに匿われてほどなく、その頼みの綱である秀衡が病篤くして、亡くなった。
かつて義経が元服して九郎義経と名乗り始めたばかりの少年時代、秀衡は年若い義経を保護した。鞍馬から逃げてきた義経は秀衡の庇護の下で少年時代を過ごし、兄頼朝の平氏打倒の挙兵に呼応し、顔も知らぬ兄の助けに何とかなりたいと秀衡に願い出て平泉を出ていった。