テキストサイズ

きょうどうせいかつ。

第6章 ひめはゆっくり かくせいする。


勇者が先ほどまで話していた姫は、どちらかというと、芸術品のような美しさを持っていたのだが、今、勇者の前にいる姫は、妖艶というか、まるで魔物のような美しさを持っていた。

勇者の全身に、冷や汗が伝う。

姫は、優雅にくるりと回り、側にあった椅子に腰掛けた。

シニカルな笑みを浮かべて、勇者を値踏みするような目で見る。

「どう? 動けないでしょう? 本当はね、黙ってるつもりだったの……」

隣に立っている魔王の、腕に刺さっている短刀を抜いて、勇者の足ものへ投げる。

「でも、私のダミアンを殺そうとしたから──」

勇者は、姫の真っ赤な目を見てぞっとした。

「ちょっとムカついて……」

彼女は違う。
彼女は、今までの姫とは違う。

そうだ、聞いた事がある。
正直、ただの噂だと思っていたのだが──。

昔、姫は、使用人を、殺した事がある──。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ