秘密の蜜は甘い
第5章 ただ呆然と
それからずっとあたしは下を向いていた。馬鹿みたいに高鳴る心臓をこれ以上速める訳にはいかないからね。
馬鹿だ。
…馬鹿。
リクなのに。
――…お兄ちゃんが好きなのに。
響く歓声と共に、
あたしは顔を上げた。
リクが真ん中からロングシュートを
決めたのだ。
「きゃあああ!」
女子達の悲鳴とも言える叫び声は、体育館中に響く。
リクってこんな綺麗な顔をしてたんだ。キラキラして、輝いて見える。
…きっとあたし、熱があるんだ。
だからこんなに熱いんだ。
だからこんなに…
リクがキラキラして見えるんだ。