彼と心と体と。
第37章 不機嫌と優しさ
逃げ切れず、やはり拓海の唇に捕らえられた。
腰に回された手のせいで身動きがとれない。
あたしが疲れたことに気付いて、拓海はあたしを解放する。
拓海の鎖骨におでこをあてた。
あたしの身長は変わらないのに、拓海だけ伸びていく。
あたしの左の横髪を耳にかけ、首を舌でなぞる。
「汗かいてるよ?」
部屋が暑くて汗をかいていたから、嫌かなぁと思って一応言ってみたが、拓海は何も答えなかった。
その代わりに、首に何度も優しく口づけた。
そんなに優しくなくていいのに。
ちょっと痛いくらいがあたし好みなのに。
噛み付いてくれてもいいのに。
痛いくらいに吸ってくれてもいいのに。
今日の拓海はなんだか違う。
そう思った。