禁断の果実 ―Forbidden fruits―
第5章 第5章
匠海とは生まれたころからずっと一緒なのに、それでも時折はっとした彼の美しさに驚かされることがある。内から醸し出される上質な空気は他にはないものだ。父からは威厳を感じることはあるが匠海のそれとは違うから、もしや匠海の産みの母親の血を引いたのだろうか――。
「で……、ヴィヴィは何を願うの?」
匠海の素敵な演奏に聞き惚れていたヴィヴィに、匠海が突然質問する。その手は喋りながらも器用に音を紡ぎだしている。
「え……?」
咄嗟にどういう意味か分からなかったヴィヴィは、頬杖から顔を離して匠海を見る。
「『星』に何を『願う』の――? やっぱり、金メダル?」
そう言う匠海の視線は鍵盤へと向けられていたが、瞳は優しく細められていた。
「えっと……」
ヴィヴィの胸が少しずつドキドキと鼓動を早める。
「お兄ちゃんと……」
ヴィヴィは少し『願い』を口にするのを躊躇う。
(こんなこと言ったら、お兄ちゃん、どんな顔をするんだろう――?)
『 大切な人(お兄ちゃん)と ずっと一緒にいられますように―― 』
「俺と? 何――?」
言いよどんでいるヴィヴィに、匠海が先を促す。ヴィヴィとは違って、妹である自分に絶対ドキドキなんてした事がないであろう匠海に、ヴィヴィはちょっと面白くないなと思う。
「………………」
(お兄ちゃんも、たまにはドキドキすればいいんだっ!!)
ヴィヴィはそう逆切れするとピアノを弾き続ける匠海の傍まで寄り、兄の座る横長の椅子に片膝を付いた。そして、
「お兄ちゃんに、毎日チュウして貰えます様に――ってお願いするのっ!!」
そう言い放つと匠海の首に両腕を回す。そして兄の顔を強引に引き寄せるとチュっと音がしそうなほど強く匠海の唇のすぐ横にキスをした。
匠海が瞳を見開いてヴィヴィを振り返る。その瞳にはヴィヴィがしっかりと映り込んでいた。当たり前だがピアノの演奏も途切れる。
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