先生が教えて。
第13章 合コン
「愛梨ちゃん?」
男子の声でハッと我に返った。
「あ…、えっと、
お手洗い…、行ってくるね」
苦し紛れに言い、個室のドアを開ける。
廊下は嘘みたいに静かだった。
このまま、帰っちゃおうかな。
あ、でも鞄が…。
「はぁ…」
「なぁ」
「えっ?」
後ろから声がし、振り返ってみると
さっき合コンで1人で携帯をいじっていた男の子だった。
女の子達が話しかけてきも、軽く流すか無視するくらいかで、きっと数合わせの為に来たのかなぁと、思っていた。
顔立ちはあの中では一番良いくらいで、二重まぶたに通った鼻筋、少し暗めの茶髪に赤いピンが良く似合っている。
男子でもピンって似合うものなんだと思った。
「えっと…」
その人の手元を見ると、私の鞄を持っている。
「お前帰りたいんだろ?
だから、ほら。
丁度俺も帰ろうと思ってたし」
「え、あ、ありがとう」
鞄を投げる様に渡され、中から携帯を取り出し、夕美に適当な帰る言い訳をつけてメールを送っておいた。
その間も、その男の子は私を待つ様に立っていた。
私が歩き出すと彼も歩いた。
エレベーターに乗る。
沈黙が気まずかったので、わたしはもう一度彼にお礼を言った。