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帰り道の映画館

第1章 1

オレンジ色の雲が幾つも重なり都会の小さな空を覆っていた。
立ち並ぶビルの綺麗に磨かれた窓にもそれが写り、私の視界をその雲がズラリと囲んでいる。
肩に背負った学生鞄が妙に重く感じた。カクンと飛び跳ねる様にして鞄を背負い直す。下をみると朝ちゃんと磨いたはずのローファーが一日分の埃で微かに光を失っている。

さっきまでは学校の帰り道で、ちらほらと自分以外に家に帰る子を見かけたが、行きずりの男子学生と映画を見た後ではさすがにもう学生の姿は見えなかった。

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