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背 中

第9章 涙

泣かないと
思ってたけどね


いっぱい泣いたね
あたし。



貴女に会えなくなっても
平気だと思ってた

いっそ
会えない方がいいとさえ
思ってた



なのに
涙がいっぱい流れてた…



どうして泣いてるのか
涙が出るたびに
考えたよ



どうしてこんなに
溢れてくるんだろうって…





寂しいわけでは無い

ずっと会ってなかったからね




不安なわけでも無い

何ひとつ頼りになんて
してなかったからね







貴女の
最後の十数年が
あまりにも不幸で
あまりにも辛いものだったから



それを思うと
かわいそうで
涙が出たの…かな…



そして



そんな不幸な時間の中
少しでも
笑顔にさせてあげる
努力をしなかった



自分を





悔やんで




涙が出たの…かな…







恨んでいたのに



大嫌いだったのに






なのに






私から貴女への

最後のお別れの言葉は





声にならない声で





ごめんね





だったね





偽りでも

貴女を笑顔に
させてあげればよかった






ほんとに


ごめんね

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