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それで、また会ってる。

第1章 冷たい手



「何でって言われてもな……」

俊紀は頭を掻いて、困ったように首を傾げる。
「俺の勘違いかもしれないけど、あの時の君、すごく必死に見えたから……相当やばい事情があんじゃないかなって思って」
あと、逆らったらホントに刺される気がした。とは言わないでおこう。口は災いの元。

「そう……ですか」
「あぁ、あと敬語じゃなくていいよ。そっちこそ、あんまり気を遣わなくていいから」

むしろ敬語を使っている方が不自然に見えた。見た目によらず気を遣えるみたいだけど、やはり第一印象に振り回される。
髪ぐらい高校生なら染めてる方が多いけど、ここまで派手な色を見たのは久しぶりだ。いつもなら進んで関わりたい人種じゃないのに……何故だか、彼のことは気になる。
だからこんな事を言ってしまった。

「色々あるみたいだけど、俺ができる事なら何でも言ってくれよ。……力になるから」

余計な事は本当に言うべきじゃない。という事を俺はわかっていない。
「本当に? ありがとう。じゃあちょっと頼みがあるんだけど」
「あ、あぁ。何?」
「しばらく、俊紀さん家に泊まらせてくれないかな」
……はっ?
彼のお願いは、予想していたどのお願いよりも斜め上をいっていた。
「き、今日初めて会ったんだぞ。知らない大人の家に泊まるべきじゃないって」
「あぁ。でも大丈夫、俊紀さんなら」
大丈夫って、何を根拠に言ってんだ。根っから悪そうには見えない、けど……それもあくまでただのカンだ。
「もちろん生活費は全部自分で出すよ。ただちょっとの間、家に帰れないんだ……」
そう言うと、夕都は俯いた。わずかに見える表情はひどく不安げなもので、ただの少年みたいだった。いや、ただの少年なんだろうけども。
「うーん……」
いくら彼が一人暮らしだとしても、問題だらけだ。いや、非常識だ。彼の親だって、本当は家にいるかもしれない。ただの家出少年だったらどうする?
うー……。
なんて、いつに間にか本気で頭を悩ませてる自分がいることに戸惑っていた。
「ちょっと、考えさせてくれ。今日は、その……泊まってってもいいけど」
だけど彼の返事は、またまた俺の予想外な内容だった。

「いや、急ぎの話なんだ。……少なくとも今日から一週間ぐらいの」




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