巡 愛
第2章 言霊の……
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――午前6時40分。
枕もとの携帯から聞こえた単調なリズムのアラームで目を覚ました私は、スヌーズ機能をストップさせてディスプレイを覗いた。
3月5日……
あれから1年がたったのか。
私はベッドに入ったままおもむろに携帯の開くと、メモリーカードから1通のメールを呼び起こした。
この1年、何度となく読み返してきた『未明さんへ』という名のついた短いメール。
ただ1度として会うことのなかった、私の大切なひとからの最後のメッセージである。
1年前の今日、私は失恋をした。
「カンナ」と名乗る女性に。
そしてその日から私は妻に恋をしようと決めたのだ。
カンナさん、あなたは今、幸せでいてくれてますか?