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海蛍

第11章 Dear

――ダメだ。

このまま君を抱き締めていたら俺は戻れなくなる。


君の“義弟”の席に・・。



俺は蛍から離れ自分の部屋へ行きベッドに身を投げた。


リビングからは君のすすり泣く声が聞こえてくる。

俺はそれを聞かないように枕で頭を覆い聞こえないように耳を塞ぐ。



俺だって・・・



俺だってもう1度君にあの頃のように名前を・・・


ハルって・・・


君の優しい声で


ハルって呼んで欲しいよ


俺も君の名前を呼びたいよ



蛍って・・。


俺は抱き締めた君の温もりを確かに感じながら
堪らず声を押し殺し静かに泣いた。

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