テキストサイズ

理想と偽装の向こう側

第7章 利用と束縛

「嘉之との六年間も無駄じゃなかったと思えるかと…いつか傷が癒えたら、小田切さんと過ごした日々も、本当に宝物になると思ってて…。」



ああ…なんか私、小田切さんと『サヨナラ』の時の、心の準備をしてるみたいだ。 



「香織ん…。」
「小田…!」



小田切さんは、私の頭と肩をスッポリ包み込むように、優しき抱き締めた。



「焦らなくていいから…。」



「え…?」



「ゆっくり癒し合えばいい。香織んは、俺を利用していいんだよ…。」



「利…用…って…。」



「彼のことを忘れるのも、寄りを戻すのも、香織んの自由なんだよ。」



そう言いながら、小田切さんは私の頭を優しく撫でながら、抱き締める腕に力が入った。



「だから…許す限り、……い…て…。」



語尾が、震えて微かに聞こえた。



『俺の傍にいて…。』




ストーリーメニュー

TOPTOPへ