テキストサイズ

理想と偽装の向こう側

第3章 初めての夜

多くを語ってる訳じゃないけど、元カノについて答える小田切さんの表情は凄い穏やかで、今でも付き合ってるんじゃないかと思う程愛情が込もっていた。



「…別れちゃったんですよね…。」



「そっ、半年前にね。会ってもらえなくなった。」



「何か原因があったんですか?」



あれこれ聞いてしまって、下世話なおばちゃんみたいかな…と思いつつも問い掛ける。



小田切さんも、傷の舐め合い前提なので躊躇はないようだ。



「う~ん…やっぱり気持ちのすれ違いかな。俺が仕事が忙しくて、そっちにかまけてる間に会えなくなった。」



「でも、まだ大事に思ってますよね?!小田切さんだって素直に気持ち伝えたら彼女さん分かってくれると思いますよ!!」



「分かってくれたかな…。」



ん?過去形?



「もしかして、会えないんですか?」



小田切さんは、また小さく微笑み



「香織ん…。」



「…はい…。」



しばしの沈黙。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ