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理想と偽装の向こう側

第11章 亀裂

ソファーに横並びに座ると、嘉之が腕を伸ばし私の肩を引き寄せ、顔を頭をくっ付ける。



「シチュー旨かったよ。香織が作ったの久々だな。」



嬉しそうに話す声が、頭に響く。



「そう…良かった…。」



私は、脱力感で返事をするのが精一杯だった。 



「元木さん、ちゃんと片付いたから、気にするなよ。」



「分かった…。」



気にしたくなくても彼女が天然で、煽ってくるんだからどうにもならない。



「何で…泣いたの?」



それ…聞きますか…正直に言ったらどうするのかな…逆ギレされそうだけど。



「不安だったから…。」
「不安…何が?」



全部…。
嘉之の気持ちが分からなくて、全てが不安になる。 



でも、そんなこと言わせたい訳じゃないんだよね…きっと。



「全然…帰って来ないから…。」



「はははっ!それだけでかよ!」



それだけな訳ないよ…。



「俺は…二ヶ月半、不安だったよ…。」
「えっ?」



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