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理想と偽装の向こう側

第14章 時限爆弾

「こんなもんかな!」



手のひらで一束持ち上げ、サラサラと落としていく。



「うん…ありがとう…。」



こうなった経緯を思うと、変な感じだな。
案の定、嘉之は後ろから私の肩を抱きしめてきて



「じゃ!祝杯しようぜ!」



嬉しそうに言うのもんだから



「私…仕事に戻るから、飲まないよ。」



出来る限りの抵抗。



「…今日、直帰していいはずだろ。香織の分は、みんなで分配してやってもらえてるはずだよな。」



そう言ってニヤリと嘉之は笑った。



「うっ…。」



そこまで、手配済みにしたんだ…。
どこから、それだけのこと思い付くんだろうか。 



「てか、服来ないと帰れねぇよな。」



更に、きつく抱きしめられる。



はぁ…どこまで策略してんだろう…先行きに地獄を見るようだ。



「でも…戻ったら…。」



「ゆっくり、話ししよう。誤解があるなら、解きたいから…。」



嘉之は、私の頭に頬をくっつけて、甘えた感じで言ってきた。



意を決するしかないか…。



「分かった…聞かせて欲しい…。」



本当に本音を聞けるのだろうか…。



聞けても、私たちはもう戻れないのに…。



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