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理想と偽装の向こう側

第15章 発動

凄い勢いで、嘉之に引っ張られて、小田切さんから引き剥がされる。



「嫌ぁっ―――!!」
「落ち着いて!香織!」



私は黎子にしがみつき、号泣してしまった。



「わぁぁぁぁっ!!」
「香織…。」



黎子は、黙ってしばらく私の背中を擦ってくれていた。 



一頻り泣いて、落ち着いてきた時、



「もし…出来てたら、どうするの?」



「…産むよ…。」



黎子は、私の肩を掴み少し身体を離した。



「本気?」



「子どもは…ただ宿るだけだもん…。私を選んでキテくれたんだから…産むよ。」



「嘉之と…結婚するの?」



私は、首を左右に振った。



「ううん…しないと思う…。別れるのは決めてたから…。子どもが居ても、嘉之が変わる気はしない。」



「変わるかもしれないわよ。期待は、薄いけど。」



「…今は…一緒に生きる…自信ない…。」



「そう…。とにかく、帰りに薬局に行って検査薬、買っていくのよ。」



「うん…いつも、ありがとね…。」



「しょうがないわよ…腐れ縁だもの…。一人で見るの怖いなら、呼びなさいよ!」



「うん…。」



そんな親友は、涙が引くまで背中を擦ってくれ続けた。



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