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理想と偽装の向こう側

第15章 発動

怖い…こうやって、侵食されていき、小田切さんにまで忍び寄る…。



離れたくない…。



私は、抱き締めてくれる小田切さんの腰に辺りに腕を回して、胸に顔を埋める。



本当は、こんなことできる立場じゃないのに…まだ知らない小田切さんの温かさに甘えてしまう。



小田切さんの子どもなら…こんなに、悩まなかったよね…。



「香織ん…?何があったの?」



…言えない…よ…。



「小田切さんの腕の中が…一番落ち着くんだもん…。」



「そ…なら、嬉しいな…。」



私の頭を優しく撫でてくれる。



あぁ…このまま時が、止まってくれたらいいのに…。
泣けてきそうだ。



「お風呂…入ってくるね。」



「うん。金曜日は香織んの好きそうなもの作ってあげるから、早く胃の調子良くしてね!」



…うっ…胸が痛む…。



「う、うん!楽しみにしてる~!早く、治すね!」



「美味しいワイン、用意するよ~!」



小田切スマイルを私の顔に近づける。



「ありがとう~!」



本当に…ありがとう…。



そして、ごめんなさい…小田切さん。



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