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理想と偽装の向こう側

第16章 懐古

帰り道、アパートに向かう途中の橋を渡る頃、胸元に入れている携帯が振動した。 



「ブイ~ン。ブイ~ン。」



俺は、反射的に通話を押し、携帯越しの声に思わずため息を付く



「はぁ…何だよ、滝島。」



『何だよは、ないだろ!俺、今日も忠犬の如く信リンを待ってたんだぞ!明日、ヒナちゃん休みなんだぞ!』



たく、いちいち小ネタを挟むんだから。



「因みに何でお前が、水越さんのシフト知ってんの?」



『人徳が成せる業だ!』



こいつ…。



「病院は、今日行って来たよ!切るぞ~!」




『なっ!いつの間に!ヒナちゃんと、どうなったんだ!』



何で滝島が、そこに拘ってくるんだよ。



「内緒~!バイバイキ~ン!」



『おいっ!小田切ぃ~!』



「ブチッ!」



通話を切った。



いつまでもあんな調子で話してたら、埒が明かない。



それに、アイツなんか企んでんじゃないのか?



「ブイ~ン。ブイ~ン。」



「メールだ。しつこい…あっ。」



ディスプレイには、名前の表示は無かった…水越さんだ!


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