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理想と偽装の向こう側

第16章 懐古

土曜日

11時。
駅の改札口を出て、メインストリートの手前に待ち合わせスポットがある。



若者の街だとごった返すから、大人が落ち着いて楽しめる場所にしてみたが、二十代半ばでも趣味が合いそうなお店は建ち並んでいる。 



まあ、最近はそんな年齢層でハッキリ分かれることもないし、便利な世の中だ。



時間より、ちょっと早目に着き彼女を待つことにしようとしたが、明らかに見知ってる人が立っていた。



水越さんだ。



俺なりに彼女を待たせないよう早目に来たのに、いったい何時から待ってたんだろう。



「水越さん!ごめんね!待たせた?」



駆け足で近付くと、水越さんは満面の笑顔を向けながら



「あっ!小田切さん!おはようございます!楽しみにし過ぎて、早く来ちゃって…。」



照れくさそうに頭を掻きながら、俯き加減でそう言った。


 
言ってる事も、やってる事も可愛すぎるだろ!



「そっか…結構待ったかな?」



「大丈夫です!小田切さんが来る少し前に着きましたから。小田切さんも、早目に来て下さったんですね。優しいですね。」



そう言って、微笑む。



その笑顔にドキドキする…。
今日、1日大丈夫かな…心臓…。


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