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理想と偽装の向こう側

第20章 さよなら

マンションのエントランスに着いて、急いで部屋番号を押す。



『あっ渡辺さん!』



「安岡さん!大丈夫ですか!」



『うん!上がって!』



オートロックが解除され、入り口が開く。



エレベーターに乗り部屋の前に着く頃、安岡さんがドアを開けて待っていた。



「渡辺さん!」



「はぁ!安岡さん!嘉之は?」



部屋に入ると、愕然とした。



特に散らかってる訳でもなく、嘉之は脚と腕を組んで椅子に悠長に座っている。



「はぁ…やっぱり…嘘だったの…。」



怒りで声が、震える。



そんな私に、安岡さんは



「イヤ…渡辺さん、ごめんね。でも、生きてる意味ないって言ってたのは本当で…渡辺さんと話し合いなって言ったら、自分じゃ会ってもらえないから、仲介して欲しいって頭下げられて。嘉之に頭下げられたの初めてで、俺も何か必死になっちゃって…。」 



罪悪感に駆られてる安岡さんを横目に、嘉之は



「まっ…あながち嘘じゃないよな。」



と、いけしゃあしゃあと言った。



安岡さんの親切心や友情まで、利用して!



「帰るから!安岡さんも帰りましょう!」



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