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理想と偽装の向こう側

第20章 さよなら

「なっ!ない!多分それは…ないよ。」



「そう…でも、スッキリしてる?」



「スッキリ…。」



小田切さんが何でそんな事言うか、分からなかった。



身体を少し離して、小田切さんは私の頬を手のひらで包み、覗き込む。



「浮かない顔…してるから…。」



そう言う小田切さんの顔も、寂しそうだった。



「あっ…寂しくはないよ。最後まで、向き合えなかったからかも。決してお互いが納得し合えなかったから…。それに嘉之、会社の企画の事も諦めてないし。」



「そっか、もう一回くらい…話し合いたい?」



頬に触れる小田切さんの手が温かい…私は自分の手を重ねる。



そんなの望んだら、ただの自己満足だよね…。



私はこの手を離したくはない…。



「香織ん?」



この痛い程、優しい人の側に居たいだけ…それ以上は望まない。



「ううん…いいの。もう会わない方が、お互いの為だと思うから。」



小田切さんは、抱き締めて直しながら



「…そっか…良かった…。」

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