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優しくしないで

第9章 古傷

事故から三か月…

奏は退院した



しかし、奏の耳は聞こえ無いまま…


そして、入院している間に
大事なピアノの大会も終わっていた。





エントリーしていた奏は大会に出られず…



今までの成果すら出せずに…



落選した。







奏は、持っていた楽譜を…



人知れず…



破り捨てた






さらに、

学校側の奏に対する対応も…

奏の家族を苦しめた



音大に合格する見込みのない生徒と…判断され
姉妹校への転校を提案された。


おばさんの訴える対象が、二社になった…



おばさんの事故に対する執着は恐ろしく…


近所でも噂になるくらいだった。


おじさんとも喧嘩が絶えず…





奏は…精神的にも肉体的にも
追い詰められていた。






『逃げたい…』





奏は…消えそうな声でつぶやいた。




奏は…一人苦しんでいた。







なのに…




俺は





聞こえない…フリをした…








高校生の俺に…




奏のストレスを背負う覚悟なんか




出来なかった。







俺に



奏の家族全てを受け入れ、背負う事は…




無理だと……思った…











俺は…奏に……



背を…向けてしまった。















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