優しくしないで
第23章 揺れる……
重い足を…ゆっくり前にだす…
……が……
止まってしまった……
『…あれ?…』
進まない……
手に握られたストールは…
冬の寒い風になびく…
首筋は…
冷えきって感覚がない…
「お前は…馬鹿だな…」
太一の声がした……
『太一…?』
幻聴………?……
馬鹿って…何よ…
仁さんの本当に会いたい人が…
現れたんだよ?
二人にしてあげたいじゃない…
仁さんには…ホントに感謝してるの…
仁さんには…幸せになってほしいの…
私は……仁さんに……
何もしてあげられないから…
「じゃぁ…何で…下唇噛んでるんだよ…」
癖…だよ…気にしないで…