優しくしないで
第25章 初恋
『…仁さん…?』
「俺は…逃げた…
一気に…不安になってさ、
奏を支える事…
奏の未来の事…
奏の家族の事……
考える余裕もなく…“無理”って……
俺には……重過ぎるって…」
奏さんは……その…発言を…後悔しただろうか……
「…奏は…
救われないと解って……
手首を切った―――――…
発見が早くて…一命は取り留めたけど…
耳と…手首…
ピアニストに大事な場所に傷が残ってた……」
仁さんは……拳を握り…
震えていた…
「………太一クンと……
留美ちゃんの話を聞いてて…
始めは…ビックリしてたんだ…
あの時の自分達を見ているみたいだった――――…」