優しくしないで
第3章 時は止まる
仁さんは、直ぐに終わらせてくれた…
優しさから…
逃げてしまった
仕事でやってるだけなのに…
『すみません。美容室のシャンプー台ってあまり経験がなくて…』
髪を乾かしながら、ブローしてくれる仁さんは、
「大丈夫だよ」と微笑んだ
大丈夫だよ…が…
ズキン…と心に来た…
髪を撫でて…
「高校生ちゃん、出来たよ」
と…鏡の中の私に声をかける…
『私…澤口 留美(サワグチ・ルミ)です。
高校生ちゃんって…何だか恥ずかしいので』
「留美ちゃん…か…
可愛い名前だね。
また、留美ちゃんの髪をトリートメントさせてね」
サラサラ…ツヤツヤとなった私の髪は…
美容室の照明を綺麗に反射させた
店を出て、仁さんに挨拶をした
「いつでもおいで、俺は夜はここで練習してるから。また、練習つきあって」
仁さんは、手を振り見送ってくれた
久しぶりに…
時間の流れを感じた