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雨の人

第9章 飲み会とアイツ

Side ゆき



その日の飲み会で
席が藤田さんの隣になってしまった。


藤田さんに
沢山話しかけられちゃうかな…。



「ゆきさん、飲んでますか?」


「あ、はい、飲んでます。
あの…藤田さん?

ゆきさんって…」



「あ、苗字より
なんかそっちの方が僕好きなんで
ゆきさんって呼びます」



「え、でも…みんな苗字で呼びますよ?
ゆきさんなんて
ちょっと…恥ずかしいから…
藤田さんも、苗字で」



「最初だけですよっ、
すぐに慣れますって!

ね、ゆきさん!もっと飲みましょ~」



あぁ…、藤田さんは明るくて元気。
仕事も熱心でテキパキしてて、
いい人なんだけど…

ちょっと…強引で
私はいつも押されぎみ

後で川村さんと会うから
あんまり沢山飲みたくないのにな…



「藤田さん、私、
あんまりお酒強くないんです。
だから、お酒はちょっとで…」




「あ、そうなんですか?
すみませんでした。

じゃあ、ちょっとずつ、飲みましょう」



「あ、はい…」



「あ~今日は僕、ついてるな~。
ゆきさんの隣に座れて。

お話ししたかったんですよ
色々聞いてもいいですか?」



「え?色々?ですか?」



「えぇ、色々。

あ、ゆきさん、
僕の先輩なんだから
敬語辞めて下さいよ~」



川村さんと知り合ったころ、
川村さんに

「敬語辞めて下さい」

ってお願いされたことを思い出し、
私はクスッと笑ってしまった




「あ、なんですか?
思い出し笑い?

ゆきさん、かわいいですね~。
笑うと、また更にかわいい!」



「え?!
そ、そんなことないですから
からかわないで下さい」



「そんなことありますよ?

僕、異動になって
ゆきさんの下に付くって分かった時
ヨッシャーって思ったんですから
本当に」



「藤田さん、私…困っちゃうから
あの…ホント私の話はもう…」



「ゆきさん、顔、赤いですよ?
ホント年下みたいでかわいいですね」



「かわいくなんて、ないですから!」



あ~もう、どうしよう…
早く飲み会終わらないかな…

そんなことを考えていると
藤田さんが
ちいさな声で
私の耳元でささやいた




「ゆきさん、彼氏いるんですか?」





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