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　まだ世継ぎもいない若い王である。王宮内が憂愁に閉ざされようとした時、王妃の側近である女官大勢登部が国相（琉球王府最高の官職）にひそかに進言した。
　女官長は数日前、王妃に庭の奥にはブーゲンビリアの美しい花が今、盛りだと話したことを思い出したのである。
―首里天加那志と王妃さまはもしや、奥庭においでなのやもしれません。
　そのひと言で捜索の手は奥庭にまでひろげられ、やっと国王夫妻が見つかったのである。