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最後のキス~琉球の海を渡る風~

第2章 Fall in love~恋に落ちて~

 藍那の眼に、初めて逢った時―藍那は王の妻の真戸那であるのだから、この場合、そういう言い方は妙だが―の王の黒い瞳が甦った。どこか淋しげな瞳を持つあの男なら、なるほど、看護で倒れた妻の弱さを詰るよりは、妻を疲れさせてしまった自分の病弱さを許せないと思うだろう。そんな男だと言われても、素直に頷けた。
 藍那はそっと身を起こす。慌てて女官長が寄ってきて脇から支えてくれた。

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