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運命の誘惑

第10章 曇り空  汐生side

声を上げて泣くわけでも

嗚咽を漏らすわけでもなく

ただ静かに薄らと涙を浮かべ泣く姿。



その姿を見て沸々と怒りが込み上げた。


寺島へじゃなく、彼氏へ。


何年経っても縛り付けて泣かせる彼氏へ腹が立った。




気が付くと寺島を抱き寄せてた。


1人で泣かせたくなくて。

誰かに縋らせてやりたくて。

だったらその【誰か】は俺がよくて。


いつも屋上で彼氏の声を聴いて1人で声を出さずに泣くくらいなら



「俺が寺島の【声】になってやる」



そう決めた。






‥・それなのに、












俺は熱のダルさを忘れ、急いで制服に着替えて学校へと向かった。










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