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月琴~つきのこと~

第3章 第二話 【月琴~つきのこと~】 一

 妙乃にとって二つ上の小文はすべてにおいて憧れの存在であった。たった二歳年上であるだけの姉が自分よりよほどはるかに年の離れた大人の女性のように思えてならなかった。今もこうして妖しいまでに美しい夜の桜を眺めているだけで、耳を澄ませば、姉の弾く琴の音(ね)がかすかに聞こえてくるような気さえするのだ。

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