テキストサイズ

月琴~つきのこと~

第3章 第二話 【月琴~つきのこと~】 一

 幼いときから、姉は自分にはないすべてのものを持っていた。類稀な聡明さ、愛らしさはまた、両親や大人たちからの惜しみない愛と賞賛を得、二つ違いの妙乃はいつも輝ける日輪のような姉の影で身を潜めるようにして成長した。
 それでも、妙乃が姉を憎んだことはない。すべてにおいて秀れた姉を誇らしく思いこそすれ、疎ましいと思ったことは一度たりとてなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ