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月琴~つきのこと~

第3章 第二話 【月琴~つきのこと~】 一

 妙乃は姉を憎悪した。三年という月日を経てもなお、嘉平太の心を捉えたまま離そうとしない美しい姉のことを思った。
 空を見上げても月は見えない。分厚い雲に遮られ、あれほど煌々と輝いていた月は姿を隠していた。それでも、たっぷりと咲いた桜花はそれだけでほの白く闇の中で浮かび上がっている。妙乃は閉ざされた闇の中で声を押し殺して泣いた。


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